新時代を切り拓く「個人×組織」創出のための共通目標「HR’s SDGs」
不確実な時代において、企業も個人も変化し続けられることが求められる中、個人と組織の関係は平成初頭のバブル崩壊以降、不協和音を奏ではじめ、旧来ビジネスモデルの崩壊や、インターネットやSNSの普及による情報の流動性・拡散性の高まりにより如実にその綻びは隠しきれなくなってきました。
令和時代のスタートを切る本日、「Innovation by HR」を合言葉に2017年から活動してきたHR系コミュニティ「One HR」は、持続可能な個人×組織の創出を目指し、これからの時代の人事機能(=Human Resources)に必要な6つの目標を定めました。
世界的に働く意欲も産業の勢いも失速している「日本」
米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが発表され、調査した139カ国中132位と最下位クラスだったことが2017年に報じられました。また、平成元年と平成30年の「世界時価総額ランキング」を比較すると、平成元年当時上位50社のうち32社を占めていた日本企業は、平成30年では1社のみとなっています。
人生100年・産業20年と謳われる昨今、長く豊かに働き続けられる個人を創出すること、そして、多様化する個人を活かしながら成長するこれまでとは異なる組織体が求められています。持続可能な個人と企業を生み出すためには、個人と企業が双方に変化を促し、自らも変化していく必要があるのです。
国連SDGsが示した人類の可能性
昨今、新聞やテレビにおいて「SDGs(エスディージーズ)」という言葉が頻出するようになりました。国内認知度が約2割というこのSDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で加盟国全会一致で採択された、国際社会共通の目標です。
▼SDGsは「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されている
SDGsは、普遍的な目標として「誰も置き去りにしない」という約束を掲げています。先進国と途上国、そして企業と個人がともに目標達成のために努力していかなければ、貧困の解消や格差の是正などの深刻な問題の解決はできない、という思想が背景にあるからです。
全員で持続可能な個人と企業を創っていく
One HRでは、国連の掲げるSDGsが提示した「地球に住む全員(=地球市民)による持続可能な地球の開発」という考え方に着想を得て、2018年からHR版のSDGs策定のプロジェクトをスタートさせました。
人生100年×産業寿命20年時代において、持続可能な個人と組織を創り出すことは、人事や人材会社に留まらず、経営者や個人、そして政府の課題でもあるという想いをベースに、「どんな個人も、どんな企業も置き去りにしない」ために、全員で取り組むための目標の設定を目指しました。
▼プロジェクト参加者は企業人事や国連が掲げるSDGs推進者、人材会社、経産省メンバー、経営者、学生など
▼今年3月には公開ワークショップを開催
なお、HR’s SDGsは、国連の掲げる SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を中心に、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」を企業組織や個人(=HR)に落とし込んだときの開発目標という位置付けとなります。
100年続く個人と組織を創るための6つの目標
それでは、6つの目標をそれぞれご紹介します。
1.働く責任 働く自由
現在、企業組織では組織が個人に役割を与え、個人はその与えられた責任範囲の中で最大限のパフォーマンスを挙げようとしているケースが散見されます。しかし、それによって働く個人はその組織内に最適化されたスキルしか育たず、結果として、その組織内においても時代とともにスキルが陳腐化してしまい、不必要の烙印を押されてしまっている現状があります。
私たちは「企業は、個人が自由を感じながら働くために役割を明確にし、個人も、自由を選ぶための役割を果たす」HRを創造します。
2.違いを力に
終身雇用や旧来の価値観を拭えないまま、今なお性別や国籍、信条、働く場所、身体、保育、介護などの制限により、活躍の幅が限られる人々が多く存在します。結果として、企業の人材獲得や成長自体に制限をかけてしまうという皮肉な状況が続いているのです。
私たちは「制限や制約に捉われることなく働くことができる仕組み・文化を創る」HRを創造します。
3.本音で語れる場づくり
「心理的安全性」という言葉が着目されているように、企業組織内でいかに個人が本音で話すことができるかどうかが課題になっています。当事者同士で本音で話し合う・議論し合う機会や環境がないことで、個人の意見が企業に反映されず、企業も個人の意見を吸い上げることができていません。例えば、退職するタイミングで個人から不満が表出しても、多くの企業では退職者の意見を課題として認識していません。その結果、個人に対しても企業に対しても解決・改善に繋がらない不毛なスパイラルが続いてしまっています。
私たちは「企業と個人、個人と個人がお互いの感情や意見を交わし、高め合うための環境を創る」HRを創造します。
4.志と志を重ねて
仕事をするための目的は「給与」や「やりがい」、「仲間」「社会貢献」など人それぞれであるにもかかわらず、企業は自身のミッションを押し付け、ある種盲目的なコミットメントを求めてしまいがちです。理念ハラスメントともいえるこの押しつけにより、疲弊した個人のパフォーマンスは落ちてしまい、結果として企業の成長も損ねてしまうという目も当てられない事態を招いてしまうケースもあります。
私たちは「個人と企業の使命や目標を共有・理解し合い、相互の実現に向けたパートナーシップを築く」HRを創造します。
5.育つために育てる
企業組織が評価するスキルやスタンスは、組織外では評価されないことが少なくありません。時代に合致した企業を創るためにも、積極的に育成投資や社外と接する機会の後押しが必要ですが、目の前の利益を優先し、先送りしている企業が散見されます。
私たちは「企業と個人が互いに成長するために、お互いの成長を支え合う」HRを創造します。
6.はたらくを楽しく
21世紀を迎え、20年が経とうとする中、いまだに勤務問題を原因の1つとする自殺者数は2017年に1991人(警察庁自殺者統計データ)に上り、また、就活を苦にした自殺も2013年までの7年間で218人(同上)に上っています。世界幸福度ランキングは58位(国連「世界幸福度報告書」2019年版)と低く、先にも触れたとおり、エンゲージメントは世界でも最下位クラスです。
私たちは「個人も企業も幸せを享受し続けるために、心身の豊かさと働く喜びをもって変革していく」HRを創造します。
これからの「HR・働き方」を考える合言葉に
今後One HRでは、このHR’s SDGsが絵に描いた餅にならぬよう、各目標に紐づいたセミナーや勉強会を開催して参ります。また、HR系のイベントや勉強会を行っている団体様で、イベント告知時にテーマに関連するHR’s SDGsの目標をイベントページやイベント内でご紹介いただける場合、One HRのHPやFacebookでもイベントの告知を発信するような連携を行っていければと考えています。
また、HR版SDGsを広めてくださるエヴァンジェリストを募集させていただき、専用の名刺の発行や勉強会を開催したいと考えています。
※イベント連携やHR版SDGsのエバンジェリストにご興味のある方はこちらからお問合せください
立ちふさがる課題と今後のアクション
このHR’s SDGsを、人事施策にまで落とし込んでいくためにクリアしなければいけない課題は、まだまだ山積みです。
例として
- 6つの目標を実現するためにあるべき人事の体制を考えること
- この目標の実現に対して経営者のコミットメントを引き出すためのベネフィットを提示すること
- このプロジェクトに参加することのインセンティブを設計すること
などが挙げられます。
私たちは、令和元年が終わる今年12月末までに、まずはHR’s SDGsを具体的な人事施策にまで落とし込み、来年以降に実践へと移せるよう行動して参ります。ご賛同いただける方は、ぜひ今後開催する各種セミナーやイベント、分科会に積極的にご参加いただけますと嬉しく存じます。
100年後の未来に向けて、想いのある皆様のご参画をお待ちしております。
One HR 事務局・HR’s SDGs策定プロジェクトメンバー 一同
ご賛同を頂いている皆様(五十音順、敬称略)
- 麻生 要一(起業家・投資家・経営者)
- 石山 恒貴(法政大学大学院政策創造研究科 教授、研究科長)
- 遠藤忍(教員・Teach For Japan 7期フェロー)
- 大木 清弘(東京大学大学院 経済学研究科 講師)
- 太田 康子(CSR48 総監督、一般社団法人ウーマンイノベーション 理事)
- 小野りちこ(HRテクノロジーコンソーシアム 代表理事)
- 加藤 健太(株式会社エンファクトリー 代表取締役社長)
- 菊地 恵理子(タイガーモブ株式会社 代表取締役)
- 北野 唯我
- 倉増 京平(一般社団法人WorkDesignLab 理事)
- 小安 美和(株式会社Will Lab 代表取締役)
- 小崎 亜依子(鎌倉サステナビリティ研究所 理事)
- 齋藤 利勝(一般社団法人プロフェッショナル顧問®協会 理事長)
- 斉藤 知明(Unipos株式会社 代表取締役CEO)
- 清水 久三子(株式会社AND CREATE 代表取締役)
- 島田 由香(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
- 島村 学(教員)
- 白石 紘一(弁護士)
- 白河 桃子(相模女子大、昭和女子大客員教授、少子化ジャーナリスト)
- 杉山 直隆(ライター、「30歳からのインターンシップ」編集長)
- 曽根 秀晶(ランサーズ株式会社 取締役 CSO)
- 田岡 一樹
- 田中 聡(立教大学 経営学部 助教)
- 田中 美和(株式会社Waris共同代表 / 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事)
- 徳田 葵(株式会社Schooアナウンサー/ビジネスタレント)
- 永井 貴博(株式会社ユニイク 代表取締役社長)
- 西島 悠蔵(ベルフェイス株式会社・人事採用責任者)
- 西村 創一朗(HARES CEO / 複業研究家)
- 橋詰 千彬(株式会社Schoo ラーニングデザインユニット)
- 橋本 祐造(株式会社RECOMO 代表取締役社長兼CEO)
- 日比谷 尚武 (一般社団法人at Will Work 理事)
- 平田 麻莉(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事)
- 二川 佳祐(東京都公立小学校 主任教諭)
- 古田 佳苗(タイガーモブ株式会社 海外インターン事業統括)
- 前田 京子
- 三浦 孝文(オイシックス・ラ・大地株式会社 人材企画室 人材スカウトセクション マネージャー / 人事ごった煮会 発起人)
- 本山 大志
- 吉崎 亮介(株式会社キカガク 代表取締役社長)
- 米山 侑志
※所属・役職は令和元年(2019年)5月時点
共同代表3名による「HR’s SDGsに込めた想い」
島崎 由真:「HRの令和」時代を産み出そう
これまで仕事柄、好きな時間に好きな人と働く人たちをたくさん見てきました。一方で、旧い考えに固執して、それに縛られて生きている人たちもたくさん見てきました。
別にその方々の人生なので、どうなろうと知ったこっちゃないと言えばそれまでですが、新しい働き方を知った側の人たちは、新しい働き方や生き方としての仕事のあり方を広げていく役割があるのではないか、とふと思ったのです。
このHR’s SDGsは、たった一人の妄想に付き合ってくれた多くの仲間と、これまでOneHRに関わってくださった皆様のたくさんの言葉と熱量から出来ています。
明日も分からぬ時代ですが、ずっと先まで見届けたくなるような、素敵な未来を創っていきましょう。
麓 貴史:組織主語でなく、自分主語の本当のキャリアを身に付けよう
大手アウトプレイス企業にて、数千名を超えるリストラに関わった経験から、これまでのキャリアの歩み方が淘汰されている現実を多数目の当たりにしてきたと同時に、かつて日本の経済を支えてきた産業の将来性に危機感を覚えました。
その後、企業の新規事業開発やスタートアップに携わったり、新たな働き方を実践するなど、今後の日本に必要な能力と組織体を研究する為に、常に当事者として体現する事を信念に取り組んでいます。
後悔しない人生を送る為、また次世代に豊かな環境を受け継ぐため、個人も組織もアップデートが必要であり、このHR's SDGsはその為のガイドラインとなるべく誰もが実践できる手段の言語化に取り組んでいきたいと考えています。
西村 英丈:HR’s SDGsを実装した「令和型人事モデル」の構築を
人事の役割は、「組織」と「個人」 で最高のパフォーマンスを発揮することであり、サステナブルな「組織」と「個人」の成長を促すこのHR’s SDGsの実践に尽きると思います。多様化する個のニーズをどのように組織に取り込み、勝てる組織を作れるか?個人だけがいい、組織だけがいいということではなく、相乗効果を生み出す仕組みとしての“人事部”である必要があります。
今後、人材の流動性は間違いなく高まっていきますが、決して1社での終身雇用を前提としないまでも、個人がその会社(プロジェクト)のメンバーシップとなった時に、いかに組織と個人のパフォーマンスを最大化できるか、まさに、その機能こそが、HRの役割です。そして、この役割の遂行こそが、HR’s SDGsの実践であります。今後、その実践方法としての令和型人事部モデルも発信していきます。
One HR -Innovation by HR-
これからの企業と個人の関係をHR企業と企業人事主導で考えるための団体です。それぞれのプレイヤーの最新事例を紹介する記事やイベントを掲載しています。
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